野坂山地 秋の音

カチリ

石英の音

井上靖の本で出会った美しい言葉。

秋の里山を歩くと、こころの中でつぶやく。

その瞬間、中学生の私に戻る。

美しい言葉、美しい風景に出会った時のドキドキした感情はまだ私に残っている。

そんな自分に安堵する。

 

古道が残る山肌。

毎年毎年落ち葉が積み重なりふわふわの道。

カサ、カサ、カサ、乾いた足元の音は澄んだ秋の空気に吸い込まれ、振り返ると静寂さだけが残っていた。